<熱帯林の生態系>
熱帯林とは熱帯地方に成立する森林の総称です。 熱帯林には熱帯多雨気候に成立する熱帯雨林の他にもアフリカ東部やインドに存在する熱帯低木林やサバナ(熱帯草原)との周辺に存在する熱帯疎林、乾季と雨季のある地方に成立する熱帯雨緑林などがあります。
アジアや南米の熱帯地方では乾燥帯が存在しないため、程度の差こそあれ森林が成立します。
日本の植生に繋がる熱帯林はボルネオ、スマトラ、マレー半島を中心とした熱帯林です。 この地方に成立するのが熱帯雨林で、日本人がイメージする熱帯森林の代表的なものであるだけでなく、日本に輸入される熱帯木材の主要産地になっています。
熱帯林を代表する熱帯雨林の基本的な特徴は植物の種類が非常に多いことです。 このためその森林構造は単純なものではなく、土地の標高や水条件(土壌の水分含有量等)に応じてさまざまな形態があります。 湿地帯の有無や海岸線、地形のわずかな違いも植生を大きく変化させる要因になります。 見た目は同じように見える樹木でも土地によって樹種が違うことは普通のことです。 例えば海岸線ではココヤシが多く、河川岸ではサゴヤシが目立ち、内陸に入るとニッパヤシやアブラヤシが増えます。
熱帯雨林の基本構造は植物の種類の多さに伴う多層林であることです。 その構造は非常に複雑ですが、一般に認識されているモデルがメランティやバンキライなどのフタバガキ科の高木を優占種とする五層構造の森林モデルです。
これらの高木はラワン材として日本に輸入される木材の原木であり、20世紀後半ホワイトメランティを中心として大量に輸入された歴史もあります。 ちなみにラワンとはタガログ語でこれらの高木を意味する総称です。
熱帯雨林の五層構造は高木層、亜高木層、中低木層、潅木層、林床の五つの層に分けられます。 各層ごとに植物の種類が違うのが普通で、臨床には草本類とシダ植物の多くが含まれます。 ただし熱帯雨林の特徴として、つる植物やオオタニワタリのような着生植物が多いこともあり、実際の構造ははるかに複雑なものになります。
熱帯雨林の植物生産量は日本の温帯林の十倍、消費量が四倍になると言われ、純生産量にして2.5〜4倍ほどになると言われています。こうした根拠の一つがホイッタカーが1975年に発表した森林に関する論文で、現在では別の研究成果が進んでいる可能性があります。
豊富な植物種と多層にわたる植生は動物種にさまざまな生活空間を提供します。 熱帯林には植物に直接依存する多様な昆虫類が生息しており、さらにその昆虫類を捕食する鳥類や両生類が生息しています。 膨大な植物生産量は多くの土壌動物(ミミズ、ヤスデ、ダンゴムシ、ダニなど)を養うだけでなく、河川を通じて多くの微生物群や魚類、イリエワニのような大型爬虫類までいろいろな動物が生息できる環境を作り出しています。 大型哺乳類では草食性のアジアゾウや、肉食性のマレータイガー、スマトラタイガーと呼ばれるトラがいます。
現在では多くの動物種がその個体数を減少させ、絶滅が心配される種類も少なくありませんが、本来の熱帯林は豊かなフォーナ(動物相)とフローラ(植物相)を持つ野生生物(ワイルドライフ)に溢れる所でした。
アジアの森林はインドなどの南アジアでは、主として農業開発により森林が減少しています。 東南アジアでは木材生産として森林の伐採が行われているほか、アブラヤシなどのプランテーションの開発、人口増加に伴う焼畑の頻発によって急速に破壊が進んでいます。
現在のところ各国政府は貧困の撲滅を名目とした経済発展に政策の重点を置いており、ブルネイを例外として自然保護に関する森林保全に熱心ではありません。 20世紀の後半は地球史において人類による自然破壊が最も進んだ時期として記憶されることになるでしょう。 そして21世紀の今日でもこの自然破壊傾向は熱帯林に関しては治まる様子がなく、早急に解決するべき課題として残ったままになっています。

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