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<クリプトコリネの生態系>

熱帯林の多層植生の中で水生植物は独特のニッチ(生態系の中の位置)を持っています。

アジアの熱帯林では中南米の湿地帯に見られるような水生高木は見られずマングローブのような潅木類が優占種となることが多いのです。 またイネ科やカヤツリグサ科の大形の挺水生草本類、アローカシア属のサトイモ科の大型草本類も優占種を形成することになります。 このような大型の水生植物が繁茂している場所では、その他の小型の水生植物は脇へ追いやられて、ウキクサのような浮漂植物や深水層に適応した沈水植物が空いたニッチを占めることになります。 これらの植物群は総じて明るい日光を必要とするため、広い水域周辺の日射をさえぎる高木が育たない場所に群落を作ります。

森林内部の細流で周辺の高木群により日光が十分に得られないところでは、別の水生植物が繁茂することになります。 熱帯森林周辺の水域は森林の生産量を背景として、豊富な有機物と同時に豊富なミネラル成分を含んでいることが多く、いわゆるブラックウォーターもこうした河川水に含まれます。
この森林細流に生育する水生植物の一つがサトイモ科のクリプトコリネ属です。

一般に水生植物は明るい日光を好みます。 しかし日本の水生植物の中でもサトイモ科のセキショウのように半日陰の流水域に生育するものがあるように、クリプトコリネ属の多くは半陰性の水域でも生育することができます。 そのためクリプトコリネは森林周辺の細流を代表する水生植物になっています。
クリプトコリネは熱帯森林の多層構造の中では最下層に位置する植物になりますが、水域だけに限れば優占種とも考えられます。